労働時間の定め

労働時間とは

労働時間について正確に理解している人はどれくらいいるのでしょうか?

労働時間とは具体的にどこからどこまで含まれているのか

  • 着替えの時間は?
  • 休憩時間は?
  • 通勤時間は?
  • 待機時間は?
  • 営業所Aから営業所Bまでの移動時間は?
  • 会社以外の場所で行われる研修は?

給与形態や契約によっては始業と終業以外の時間は気にしない場合もあるでしょうが、上記の時間は法律や裁判の判例によってきっちりと定義されているようです。

厚生労働省による労働時間と休憩の定義

厚労省のホームページには「労働時間・休日に関する主な制度」として明記されています。

簡単にまとめると

  • 原則、会社は1日に8時間、1週間に40時間以上働かせてはダメ
  • 原則、労働時間が6時間を超える場合45分以上、8時間を超える場合1時間以上の休憩を与えなくてはダメ
  • 原則、最低でも1週間に1日、4週間の間に4日以上の休日を与えなくてはダメ
  • 上記の原則を超えて残業や休日出勤をさせたい場合、時間外労働協定(36(サブロク)協定)を労使間で結んで行政官庁に届ければ出来る。但し、時間外労働にも限度はある

詳しくは「職場の安全サイト」のページをご覧ください。

規定としての労働時間と休日は判るけど、じゃぁ実際のところどうなんだろう?ということで、最初の箇条書きのような疑問が出てきます。

また、サービス残業を強いられていて、どうにかして改善や請求したいと考えているなら、会社が定めている就業規則と照らし合わせて、国が定めている法律を調べることを強くお勧めします。

労働時間とは具体的にどこからどこまで含まれているのか

ここからは最初のリストを一つ一つ考えていきます。

厚労省の定義だけでなく裁判の判決等を見ていると、労働時間を簡潔に説明するなら

「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」

と、なるようです。

特に重要なのが

『労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間』

であり、

  • 着替えの時間は?
  • 待機時間は?
  • 営業所Aから営業所Bまでの移動時間は?
  • 会社以外の場所で行われる研修は?

この4つの項目に対しては、はっきりと労働時間といえるようです。

研修については、業務命令である場合は勿論、明確な指示がなくても行くことが慣習であったり、行かなかった場合査定などに影響する場合も指揮命令下であるといえそうです。

  • 休憩時間は?

この項目に関しては『使用者の指揮命令』が重要になり、例えば休憩中であっても電話や来客の対応をさせられていたり、何らかの指示があればすぐに動けるような状況での休憩は、法律上及び社会通念上は休憩とはみなされないようです。

B運輸における待機時間の扱い

B運輸の給与形態は、主に時間給制を採用していてその他多少の歩合給と手当が支給されてました。

運送業というのは、会社に出社して乗務開始後、現場へ移動、積み込み又は荷降ろしして、会社に戻り乗務終了というのが一連の流れになります。

この流れの中で荷主や納品現場の都合によって、出荷待ちであったり納品の順番待ちといった「待機時間」という“ただ待っている時間”が発生します。

納品先によっては、2時間待ちは当たり前。ひどい時には8時間待ってようやく卸せたなんてことも。

給与計算に時給制をとっている会社では、この「待機時間」の扱いが大きな問題になります。
また、月給制、日給月給制と言った固定給だったとしても残業時間が多い仕事の場合は、大きく影響するでしょう。

経費削減に熱心だったB運輸経営者は、従業員の時給を削るためにもっともらしい理由を並べて、本来労働時間である待機時間を休憩扱いにして、人件費を削ろうとしてました。

最近の中型以上のトラックにはデジタルタコグラフ(=運行記録計器、通称“デジタコ”)が装着されています。
このデジタコには、「時間」「距離」「速度」「GPSによる位置情報」「アイドリング時間」「エンジン回転数」「エンジンオンオフ時間」等、実に様々な情報が自動的に記録されます。またドライバーの任意で「積み込み」「荷卸し」「休憩」「待機」など、機器に設定されたボタンを押すことで状況の記録も出来ます。

デジタコの詳細なデータを利用して会社はドライバーの行動を逐一チェックし、実際は出荷待ちなどで待機状態であっても、一定の時間トラックが動いていない場合は休憩扱いにする=無給という方法で人件費削減を行っていました。

単純計算になりますが、仮に「時給1000円、1日の労働時間10時間、待機時間2時間」という条件働いているとします。

  • 所定時間8時間~8000円+残業時間2時間~2500円(時間外25%増)=日給10500円

ですが、待機時間を休憩扱いにされると2時間分は無給となりますので、

  • 所定時間8時間~8000円+残業時間0=日給8000円

となり、2500円も削られてしまいます。

1ヶ月20日労働なら50000円、1年で60万円。

休日出勤や深夜労働もあれば割り増し手当が付加され、更に金額は上がります。庶民には大きな額ですね。

厚生労働省のページで記されている通り、休憩時間とは

「休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されていなければなりません。従って、待機時間等のいわゆる手待時間は休憩に含まれません。」

とあり、例え何十分だろうと何時間だろうと待機してる以上は休憩にならず立派な労働時間であるといえます。

労働時間の限度

ニュースではしばしば「過労死」について取り沙汰されます。
長時間労働や苛酷な環境での労働によって犠牲者が出ることが問題視されており、労働環境改善のために官民一体で取り組む必要があるようです。

2017年3月28日、政府主導で九つの題目を軸にした労働に関する改革案「働き方改革計画」が決定されました。

参考リンク:首相官邸 働き方改革の実現

この計画の中で時間外労働の上限に規制が明記されてます。

時間外労働の上限規制

  • 週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度を、原則として、月45時間、かつ、年360時間とする。
  • 特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間とする。
  • かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限として
      1. 2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内
      2. 単月では、休日労働を含んで100時間未満
      3. 原則を上回る特例の適用は年6回を上限

簡単にいうと、「会社は労働者に平均で80時間、最高でも100時間以上休出を含めて残業させてはいけない」となるでしょうか。

まぁ、80時間でも残業すればクタクタになりますが、この規制が施行されて少しでも労働環境が改善されることを期待します。

ちなみにこの法案が施行されるのは2019年からになるようです。

労働時間のまとめ

労働時間の定義について私の経験を交えて書きました。

労働時間に関してB運輸のように、法律に沿わない会社独自の規則があったり、裁判事例や他業種でも様々な論点があるようです。

  • 不当に労働時間(賃金)を削られていないか?
  • 休憩時間なのに業務を任されていないか?
  • 労働時間、残業時間は上限が決められており、休日日数も定められています。

等、自分の労働契約や給料の実態が、どうなっているか確認したうえで、法律や判例を調べると問題点が見えてくると思います。
業務命令や上司からのプレッシャーなどで、サービス残業や長時間労働を強いられたり、労働時間や休憩時間について少しでも疑問を抱いた時は、心や身体を壊す前に迷わず専門家等に相談することをお勧めします。

参考

労働基準法 第4章 32条


 

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