職業安定所と雇用保険と特定受給資格者

公共職業安定所

「公共職業安定所とは国民に安定した雇用機会を確保することを目的として国(厚生労働省)が設置する行政機関である。略称は職安(しょくあん)、愛称はハローワーク。本項目では、法令に関連する部分以外では「ハローワーク」の名称を使用する。」

職安です。

このページを訪れた方には説明の必要もないでしょうが、ハローワークが愛称だったのは意外でした。

ブラック企業に勤める人たちが、必ず一度は考えるのは

「いつ転職しようか・・・」

ではないでしょうか。

中にはブラックであっても会社に骨を埋める覚悟で働いている人もいるでしょうが、条件の良い会社から誘いを受けたら心揺らぐのが現実と思います。

そのように次の転職先が決まっているのであれば、職安や雇用保険に頼らなくてもいいのですが、行き先も無く退社するのは勢いか勇気が要ります。

しかしこのページを見てるあなたが、現在ブラック企業に勤めていて心身ともに限界を感じているなら、破滅的な精神状態になる前に辞めることを検討してください。

天引きされている失業保険を有効利用して、無理なく再スタートを切ることもできるでしょう。

雇用保険(失業保険)の基礎

“労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して、失業等給付を支給します。
また、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進等をはかるための二事業を行っています。”
(以上、厚生労働省HPから引用)
参照リンク:厚生労働省 雇用保険制度

簡単にまとめると「失業した時に、国が資金援助します。」という制度です。

但し、給付を受けるにはいくつかの条件と手続きが必要になります。

まずは条件からみていきましょう。と、思いましたが逐一解説してしまうと非常に長くなりそうなので、雇用保険(失業保険)の一般的な説明は、上のリンクにある厚労省のHPを参考にするか、検索してみてください。

このHPではブラック企業に勤めてしまった人向けの説明をします。

そもそも「うちは社会保険どころか雇用保険すら入ってねーよ!」なんて会社もあるようです。
そんな場合も心配いりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

以上の条件を満たしているなら会社は雇った人を雇用保険に加入させる義務が生じます。
この義務を会社が守っていなかった場合

雇用保険法83条1項 6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

といった割と重い罰が科せられることになります。

そして会社が雇用保険を掛けてなかったとしても、従業員はハローワークに申請すれば、過去2年間までと限定されてしまいますが、保険料を支払うことで雇用保険を受けられるようになります。

また、通常自己都合で退社した場合は、雇用保険の加入期間が1年以上必要ですが、後に説明する特定受給者(特定理由離職者)に認定されれば雇用保険の加入期間が半年以上に引き上げられるので、心当たりがある人はハローワークで職員の方に確認してみましょう。

なお失業給付の受給できる期間は、離職日から1年間までとなっています。
仮に120日の所定給付日数があるとしても、離職日から10ヵ月後に給付の手続きをしてしまうと、受給できる有効期間は2ヶ月しかなく所定給付日数の約60日分以下しか受けられないのでご注意を。
すでに「辞めちまったわ」なんて人も、定職についていない場合は給付期間が残っているかもしれないのでハローワークで相談してみてください。

特定受給資格者及び特定理由離職者とは

ここからはブラック企業でこき使われ疲れ果てて自己都合で辞めた人や、クビ宣告を受けて辞めざるを得なかった人にみて頂きたいです。
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断(厚労省pdf)
特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(職安HP)

先ずは上記リンクに目を通してもらいたいと思います。

おそらく読むだけで疲れてしまう文字量でしょう。

この分かりづらい「特定受給資格者及び特定理由離職者」を簡単に説明すると、

「退職願等を提出して会社から自己都合扱いで退社しても、一定条件を満たせば職安で会社都合扱いの認定を受けられて、優遇された受給ができるようになる」

というものです。

続いて認定を受けるための条件をリストアップしていきます。

特定受給資格者及び特定理由離職者の条件

全ての条件についてはリンク先を見てもらうとして、ここではブラック企業に関わりありそうな条件を簡潔にリストアップしていきます。

特定受給資格者

  1. 会社が倒産、又は事業所が廃止になった
  2. 事業所が移転し、通勤困難になった
  3. 解雇(正式な懲戒解雇を除く)された
  4. 労働契約締結時の労働条件と事実が相違していた
  5. 賃金の支払が2ヶ月以上遅れた
  6. 賃金が85%未満に低下した
  7. 月45時間を超える時間外労働を3ヶ月以上させられた
  8. 有期労働契約が3年以上更新されたのに、雇い止めされた
  9. セクハラ、パワハラを受けて事業主から守られなかった
  10. 退職勧奨をされて応じた(早期退職優遇制度等によらない)
  11. 会社の責任において休業が3ヶ月以上続いた
  12. 会社の業務で法令違反があった

以上、ブラック企業に関わりありそうな条件を挙げてみました。

自分の現状でいくつ当てはまっているでしょうか。

もし一つしか当てはまっていなかったとしても、認定されれば特定受給者の資格を得られます。

私の場合は、退職前に3ヶ月間以上月100時間超えの残業があったので、職安の職員に給与明細を見せただけで「あ、特定受給者ですね。」と、説明いらずで即、認定されました。
会社から提出された離職票では自己都合退社の扱いだったのですが、申請に行った際に職員によって特定理由離職者となりました。
もちろん自分で会社に問い合わせたりする必要もなく、特定受給者となるための証拠として給料明細や記録となるものを職員に提示するだけです。

特定理由離職者については、一定の個人的理由に当たるようなので上記リンク先で確認してください。

所定給付日数と給付制限期間

特定受給資格者と特定理由離職者は、所定給付日数と給付制限期間において、一般の受給者より優遇されています。

自己都合退職
雇用保険加入期間 一年未満 一年以上 十年未満 十年以上 二十年未満 二十年以上
全年齢一律 90日 120日 150日

 

特定受給資格者
雇用保険加入期間 一年未満 一年以上 五年未満 五年以上 十年未満 十年以上 二十年未満 二十年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上 35歳未満 90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上 45歳未満 90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上 60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上 65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日
  • 自己都合退職は、待機期間7日間+給付制限3ヶ月間
  • 特定受給資格者は、待機期間7日間+給付制限無し

特定受給者に認定されれば、給付日数や給付開始時期などの面で大きく優遇されています。

この表は平成29年(2017年)雇用保険制度改正版を参考に作成しました。
今回の改正で、保険税率の引き下げだったり、給付内容の拡充といった受給者にはありがたい改正がされたようです。

参照リンク: 雇用保険法等の一部を改正する法律の改正内容

就職促進手当

給付期間に再就職できた場合、様々な手当が再就職祝い金のような形でもらえます。

      • 再就職手当

    給付期間中に再就職した際所定給付日数が
    2/3以上ある場合は残日数×70%×基本手当日額
    1/3以上ある場合は残日数×60%×基本手当日額
    が、支給される。
    簡単な例として、所定日数90日、日額5000円の場合
    2/3以上なら60日×5000円×70%=21万円以上
    1/3以上なら30日×5000円×60%=9万円以上
    となり、結構な額になりますね。
    参考リンク:再就職手当のご案内

      • 就業促進定着手当

    簡単に説明すると、上の再就職が出来て、再就職手当を支給されたけど、再就職先の給料が前職より低かった人に支給されるもの。条件や計算が複雑でイマイチ感のある手当かな?
    参考リンク:再就職後の賃金が、離職前の賃金より低い場合には、「就業促進定着手当」が受けられます

      • 就業手当

    就業手当は、基本手当の受給資格がある方が再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態で就業した場合に基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上あり一定の要件に該当する場合に支給されます。支給額は、就業日×30%×基本手当日額(一定の上限あり)となります。

      • 常用就職支度手当

    こちらは上の再就職手当の逆で、給付日数が1/3以下(残1日以上)になってから就職した人への手当。
    支給額は、90(原則として基本手当の支給残日数が90日未満である場合には、支給残日数に相当する数(その数が45日を下回る場合は45))×40%×基本手当日額( 一定の上限あり)

と、色々な手当が用意されていますが、支給されるには事細かな条件や手続きが必要になります。

確実に支給されるように事前の確認やハローワークで職員への確認をしっかりしておきましょう。

失業給付を申請する時の注意点

      • 退職する前に、職安で必ず確認しましょう

ブラック企業に勤めていると、とかく被害妄想に陥りがちになります。

残業時間超過や賃金85%以下などは数字が示してくれますが、項目の9番、10番などは、言った言わないの水掛け論になり第3者では判断しにくいケースも出てきます。

なので会社から提出された書類や、自分で年月日と言われた内容が分かる日記のような記録などを持って、職安の職員に確認してください。

職安に認定の保証を貰ってから辞めましょう。

      • 虚偽の申請は絶対やめましょう。

会社を辞める時に適当な理由をつけて辞めるのは問題ないと思います。

しかし職安に申請する際、辞めた理由など細かく聴かれることもあるでしょうが、嘘はやめましょう。

事前に認定の確認を取っていれば、その確認された事実だけを言えば済みます。

また、会社に対して「会社都合」として辞めさせてくれと、お願いする必要もないです。

会社を自己都合で辞めたり、離職票の離職理由が「自己都合」としても、職安で失業保険の申請時に同時で特別受給資格の認定もするので、認定されればその場で「会社都合」に切り替わります。

失業保険を受給するにあたって、何らかの虚偽が発覚したら、以降の給付資格が無くなるだけでなく、すでに貰った給付金の返還もしなくてはならなくなるので充分注意しましょう。

職業安定所と雇用保険と特定受給資格者のまとめ

      • ブラック企業で頑張っちゃった人の為の失業保険制度がある
      • 自己都合退社だったとしても状況次第で、ハロワで相談すれば優遇されることもある
      • 条件の確認や手続きはきちんとしておきましょう。
      • 職安への虚偽申告は絶対やめましょう

ブラック企業で奴隷のように働かされた人は、退職するころには心身共に疲れ果てているでしょう。

私もB運輸でこき使われた当時軽いうつ状態となり、辞めて暫くは何もする気になりませんでした。

この特別給付制度を知らなければ、自己都合退職として3ヶ月間給付制限の間は、気持ちに焦りを抱えつつ貯金を切り崩しながらの療養と職探しだったでしょう。

しかしこの制度のおかげで、まぁ少ないながらも翌月から失業給付を受けられる安心感を持ちながら、ゆっくり療養できたと思います。

退職後、少しでも心や体を休ませたいと感じるなら是非活用したい制度です。


 

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